【隈研吾展、展示替え後の新プロジェクトご紹介!】
新たに軽井沢の展示に加わったプロジェクトをご紹介いたします。
伝統芸能伝承館「森舞台」(1996年 宮城県、登米市)です。
“光や風、自然を感じることができる”をコンセプトに森の中に建てられてた能舞台。
一年に一回こちらで上演している“登米能(とよまのう)”は仙台藩祖であり、能を愛好していた伊達政宗公に遡り、
江戸時代に原型が誕生し代々継承されてきた県無形民俗文化財です。隈氏の好きな京都の西本願寺に倣い、
能舞台という日本の伝統形式を現代的に屋外で再現しています。能面や、装束などの資料を展示するミュージアムを併設し、
観客席も多目的な用途に使用が可能で、地元の文化継承や教育・交流施設としても活用されています。
舞台の柱は青森ヒバ、屋根は登米町特産の天然スレート葺きで地場素材を活かし地域との一体化もはかっています。
また、周囲の景観との調和を保つために様々なところに工夫が施されています。例えば、舞台に腰板をつけないのは、
夜に舞台が宙に浮いているような雰囲気を演出するためであり、また舞台と見所の間の白洲は広い空間を設け、
白い砂利ではなく黒い砕石を敷きつめて、森の暗さとの一体感を出しています。
背景の鏡板には千住博による松絵が目を惹きます。
森舞台は1997年に日本建築学会賞を受賞し、隈氏がコンクリートから木・自然素材へと移行する大きな転機となった作品であり、自然に主役を譲り建築が控え目に周囲と共生する思想”負ける建築”の実践例です。